回転空転フルスロットル。

沖縄の会社員の日常の空回り+酒とごはん+富士山登頂を目指すブログです。

このはし渡れども外すべからず~明石海峡大橋ブリッジワールド~

 「…そういう鳥かよ!」と思わず突っ込む話でもしようか。

 

 「明石海峡大橋ブリッジワールド」という体験型の観光施設がある。施設といってもそれは兵庫県の淡路島と明石市(本州)の間の瀬戸内海を結ぶ長さ約4キロの明石海峡大橋に見学ツアーが設定されていて、世界最長のつり橋の塔頂、約300メートルの高度(「ココ」地点)から大阪湾と瀬戸内海をぐるり360度見回せる、なかなかのエクストリーム体験ができるのだ。

 

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 高所恐怖症ながら好奇心旺盛という相反する気質が中年男性という器に同居する僕。…あ、ごめん、「中年男性という器」という表現に我ながらへこんだ。…さておき、ちょうど関西出張があったことを機に、延泊してこの「ブリッジワールド」に申し込んでみたのだ。ちなみにインバウンド含め大人気観光体験なので2カ月前からの予約確保を推奨する。実施期間は冬季を除いた4~11月。僕はシーズン終了間際に滑り込めた。

 

 2018年11月某日。午後の部に申し込んだ僕は明石海峡大橋のたもとの「橋の科学館」、見学ツアー「午後の部」に集合したのである午後1時半。

 

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 まずは橋の建設の経緯と構造についてガイドのみなさんから説明を受ける。ガイドは初老の男性陣で、恐らく定年後の雇用延長組だろう。説明によると、瀬戸大橋以来の本州―四国を結ぶ役割の連絡橋。建造中に1995年1月の阪神大震災をまたぎ、震災で地底が変化したことで桁の長さも途中で伸びたりして、調整も経て98年4月に完成した。約10年の歳月を費やしたとのこと。

 

 それをこんなメインケーブルで、両側から引っ張って吊っているんだよね。大規模かつ緻密な計算を駆使したアナログさに感嘆する。

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  でもってオリエンテーションでは「迷惑かけないし万が一なんかあった際にも文句言わないかんね」的な誓約書にサインする。むかし東京の「よみうりランド」でバンジージャンプ飛んだ時にもこんなの書かされたなあ。

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 それを書いたらヘルメットと、橋の上の強風の中でもガイドの声を聴けるイヤホン、

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 そして物品の落下防止対策、スマホやカメラを首からぶら下げるためのケースとストラップが配られる。

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 そこまでの準備が整えばいよいよスタート。

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橋桁内を約1キロ歩き、塔を目ざします。

高所恐怖症的に何がイヤかって、足元がシースルー。つま先の向こうには常に海。ふわふわした感覚で足を前に進めます。おぼつかないことこのうえなし。

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そうして塔まで着いたらエレベーターや階段を駆使して海面から300メートル地点へ。

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 でもってこの景色。

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 息を飲むし、なんか、「人間が能動的に生み出した人工物の上で高さを味わう」という行為は「人ってすげえなー」と先人へのリスペクトにつながるんだよなあ。驚嘆と感動、そのあと余韻にひたる贅沢な時間を味わう。人ってすげえなー。

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 そんな感慨をしみじみ思いながら関西地方をパノラマで見渡し、デジカメやスマホで写真を撮っていたら、不意に海上300メートルに響いた言葉。

 「…ストラーップ!!

 え、びっくりした。すると、初老のガイドの男性の一人が僕の胸元を指さし、再度、大きな声で叫ぶ。

 「ストラーップ!!!」

 ああそうか。支給されたストラップが短かったので、首から外し、手を伸ばしてカメラを構えていたのだ。この高度だと小さい物でも落下すると危険。安全面には神経をとがらせているのだ。僕は「すいません」と会釈し、ストラップを再び首にかけた。

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 この日は風もなく、11月でも暑いくらいの日。冬場は強風のせいで見学がないのかな。そんなことを考えているとまた不意に、

 「…ストラーップ!!」の声。

さらに追うように、今度は違う方向から、

 「奥さん、ストラーップ!!」の声。

 周りを見回せば、僕以外にもそこかしこでストラップを首から外して写真を撮り、注意される人が出てきたのである。分かる。動画撮影などダイナミックに上から下にカメラを動かしたい時に、首ひもが短くて撮りづらいんだよな。まあ、安全対策から言えば、気を使いすぎるくらいがいいんだろうけど。

 

 でもガイドのみなさん、全員が「ストラップ!」の「ラ」と「ッ」の間をなぜか伸ばす。「…ストラーップ!!」言う。その違和感が徐々に大きくなる。誰が言い出したんだ。聞きやすいのかな。でもって、なぜ全員に定着したんだ。

 

 高度300メートルのむき出しの塔頂。そこかしこで響き渡る「ストラーップ!!」「ストラーップ!!」という独特の注意。僕は思わず心の中で突っ込んだ。

 

 「高いとこで『ストラーップ!!』言い過ぎだ!そういう鳥かよ!」

 

 最終的に、再びおぼつかない足元で帰路についたのである。

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 この4月から今年度の営業が始まったので、みなさんもブリッジワールドに行ってみてはどうだろうか。おすすめ。エクストリームな景色と「ストラーップ!!」が楽しめます。